心臓の病気の種類と検査

心臓とは

心臓血液を全身に送り出すポンプの役割を担っていて、サイズは握りこぶし程度です。24時間休みなく鼓動を続けているため、心臓は酸素や栄養素を多く必要とします。心臓に十分な酸素と栄養素を運ぶための血管が冠動脈です。

動脈硬化と心臓病

動脈硬化高血圧や脂質異常症、糖尿病などで血管に大きな負担がかかり続けると血管の柔軟性が失われて硬くなる動脈硬化を起こします。動脈硬化を起こした血管の内側に脂肪やコレステロールが固まったプラークが沈着すると血管が狭くなる狭窄を起こします。また、プラークが破裂して血栓ができると、血管が詰まる閉塞を起こす可能性があります。
心臓に酸素や栄養を送る冠動脈に狭窄や閉塞が起こると、狭心症や心筋梗塞といった心疾患や脳梗塞などの脳血管疾患の発症につながります。

心臓病の種類

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)

冠動脈が動脈硬化によって狭窄することで心臓が酸素不足になった状態が狭心症です。冠動脈が詰まって閉塞し、心筋(心臓を動かしている筋肉)の1部への酸素供給がなくなって壊死してしまった状態が心筋梗塞です。生活習慣病が原因となって動脈硬化が進み、それによって発症するケースがほとんどを占めています。生活習慣病や動脈硬化は自覚症状に乏しいため進行に気付かず、最初の発作で命に危険が及ぶ可能性もあります。

心臓弁膜症

心臓を流れる血液が逆流しないように、心臓には4つの弁があります。この弁に問題が起きているのが心臓弁膜症で、弁が硬くなる狭窄症では開きにくくなって血流が阻害され、弁が閉じきれない閉鎖不全症では血液が漏れてしまいます。最も多い原因となるのは、幼児期にかかるリウマチ熱の合併症です。この合併症は、成長して20歳代に弁の異常が進行して、症状が現れるようになるのは30~40歳代です。他にも弁膜症には、先天性のものや、動脈硬化などによって生じるものもあります。なお、リウマチ熱は関節リウマチとはまったく異なる病気で、A群連鎖球菌に感染した後に起こる炎症性の合併症です。

不整脈

心臓の鼓動は規則正しい電気的な刺激と伝導によって起こっています。刺激の乱れや伝導の断線などが起こると心臓が不規則に収縮して不整脈を起こします。自覚症状がないこともありますが、動悸として感じることが多くなっています。突然失神するといった症状を起こすこともあります。

心不全

心臓の持っているポンプとしての働きが弱って全身に必要な血液が供給されなくなっている、または血液の流れが滞ってしまう状態が心不全で、病名ではなく状態です。そのため、さまざまな心臓病で心不全を起こすことがあります。心不全を指摘されたらできるだけ早く原因疾患の有無やその状態を調べる必要があります。

心臓病の症状と必要な検査

主な症状をご紹介していますが、症状には個人差がありますので、循環器内科を受診してしっかり調べてもらいましょう。

胸痛

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)では、胸をしめつけられるような痛み、胸の圧迫感、のどをしめつけられるような痛み、胸の違和感などが起こりやすくなっています。
痛む場所は、左胸の心臓周辺やみぞおちが多く、左肩、奥歯、のど、首、左肩、左腕などに痛みが起こることもあります。

狭心症による胸痛

狭心症で起こる胸痛は、2~10分で治まることが多くなっています。また、冠動脈の動脈硬化がある場合の胸痛は、歩行・入浴・食事の際に起きることが多い傾向があります。最初は安静にしていれば治まりますが繰り返し起こして進行すると安静時にも胸痛を起こすことがあります。なお、ニトログリセリン(ニトロペン)をなめると数分で胸痛が治まります。動脈がけいれんして起こる胸痛は主に安静時に生じ、寒冷刺激があった際や就寝中、午前中に起こりやすい傾向があります。

心筋梗塞による胸痛

胸痛が30分以上続いたら心筋梗塞の可能性があるため、早急な受診が必要です。冷や汗や吐き気をともなうケースも多くなっています。なお、ニトログリセリン(ニトロペン)をなめてもほとんど効果はありません。

胸痛がある場合の検査

心電図、運動負荷心電図、心臓カテーテル検査、心臓超音波検査(心エコー)、心臓CT

動悸

脈が飛ぶ、ドキドキして胸が苦しい、脈が速くなる、脈が遅くなる、心臓の鼓動を強く感じるなど、動悸の状態によって可能性のある病気が異なります。

一瞬ドキっとする、脈が飛ぶ、脈が不規則になる

不整脈の中でも期外収縮の可能性があります。不整脈には特に治療の必要がないものもありますが、命に危険が及ぶものもあります。期外収縮の種類や起こる頻度を調べる必要がありますので、早めに循環器内科を受診してください。

脈が速くなる、ドキドキして苦しい

特に運動したわけではないのに突然脈が速くなる、ドキドキして胸が苦しいといった症状があり、いきなり治まる場合は、頻脈性の不整脈が疑われます。頻脈性不整脈は発作性上室性頻拍症、発作性心房細動、心室頻拍などに分けることができ、タイプや頻度、発作の持続時間などに合わせた治療が必要です。

脈が遅くなってめまいや失神を起こす

脈が遅くなる徐脈性の不整脈が疑われます。洞不全症候群や房室ブロックなど、突然死を起こす可能性もありますので、早急に適切な治療が必要です。人工ペースメーカーの植込みなどの治療も検討されます。

安静時に心臓の鼓動が気になる

貧血や甲状腺ホルモン分泌過剰などの疾患が疑われます。またストレスなどによって鼓動を大きく感じることもあります。

動悸がある場合の検査

ホルター心電図、血液検査、心臓超音波検査(心エコー)、トレッドミル運動負荷検査、心臓電気生理学的検査
なお、心臓電気生理学的検査には入院の必要があります。

倦怠感、息切れ、むくみ

心不全によって起こっている可能性があるため、原因に心疾患がないかを調べます。

倦怠感、息切れ、むくみがある場合の検査

心電図、胸部X線検査、血液検査、検尿、心臓超音波検査(心エコー)

受診の際に教えていただきたいポイント

  • いつ頃から症状がはじまったのか
  • 症状を起こすきっかけや状況
  • 症状が起こる時間帯
  • 症状の内容(痛み、息苦しさ、呼吸しにくい、足のだるさ、めまいなど)
  • 症状の持続時間
  • 現れ方(突然、徐々になど)
  • 症状を起こす頻度
  • 症状が最近、強くなっているか
  • 症状が現れる頻度が上がっていないか
  • 服薬の有無とその効果

循環器内科では、上記のようなことが問診でわかると、スムーズに必要な検査ができ、正確な診断や適切な治療につながります。

虚血性疾患(狭心症・心筋梗塞など)の危険因子

狭心症や心筋梗塞などを起こす冠動脈疾患の中でも、粥状動脈硬化症は欧米で死因の第1位であり、日本でもがんに次いで第2位を長年占めています。粥状動脈硬化症は、動脈の血管壁内側に血液成分や脂肪などのプラークが付着する、あるいは細胞が増生して血管の狭窄や、血栓による閉塞により心筋梗塞や脳梗塞を起こします。原因は加齢や遺伝的要因もありますが、それ以外に注意すべきリスクがあり適切に対処することで深刻な状態になるのを避けることができます。

高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙が特にリスクが高く、他にも肥満、ストレス、高尿酸血症(痛風)、運動不足、過度の飲酒も危険因子です。複数の危険因子がある場合、それぞれの数値が悪くなくても動脈硬化がかなり進行している可能性があります。早めに循環器内科を受診してください。

症状が出た場合の対処法

症状があった場合は、できるだけ早く循環器内科の受診が必要です。放置してしまうと深刻な心筋梗塞の発作を起こして命に危険が及ぶ可能性がありますし、重篤な後遺症を残してしまうことも考えられます。

症状の内容

虚血性心疾患では、ぼんやり痛い、重しを乗せられているような感じ、強くしめつけられている感じといった痛みを起こすことがよくあります。また、重大な心臓発作の予兆として、動悸、息切れ、倦怠感が現れることもあります。

症状の持続時間

いつもはまったく無症状で、突然苦しい状態が数分続き、いきなり治まってしまうとうケースがよくあります。よくなったからと放置してしまうと命にかかわる発作を起こす可能性がありとても危険です。

起こる時間帯

労作性狭心症は、冠動脈に狭窄があって運動や興奮などをきっかけに発作を起こします。安静時狭心症は冠動脈のけいれんが関係しているとされており、安静を保っている時や就寝中に発作を起こします。安静時狭心症は心筋梗塞の前兆として現れることがあります。

すでに狭心症と診断された方へ

こんな症状の変化に気付いたら、すぐに循環器内科を受診してください

  • 軽度の労作でも症状を起こしやすくなった
  • 胸痛など症状の程度が強くなってきた
  • 症状を起こす頻度が増えた
  • 安静時にも症状を起こすようになった
  • 症状の持続時間が長くなってきた

狭心症の治療

内服薬で発作の予防を行い、発作が起きた際にはニトログリセリン(ニトロペン)を舌下で使用して症状を和らげることができます。発作を起こした場合は、定期的な受診時期ではなくても、できるだけ早く受診してください。

心筋梗塞を起こしている可能性がある場合には、一刻も早く適切な治療が必要です。
発作が20分以上続く、冷や汗が出る、吐き気をともなう、顔色が悪い、今までにない強い痛みを感じる、といった症状がある場合には、できるだけ速やかに医療機関を受診してください。

ハイリスクな場合

高齢者や、糖尿病がある方、脳梗塞経験がある方の場合、胸痛を感じにくい傾向があります。胸痛がなくても、息苦しい、倦怠感、疲れやすい、息切れする、食欲不振など何らかの不調に気付いたら、すぐ主治医に相談して心臓の状態などを確認してもらってください。

心臓病を悪化させないために注意したいこと

温度変化

急激な温度変化は心臓に負担をかけます。冬季の外出では厚着して暖かくしてください。また、冬季はお風呂やトイレなどを暖めておくことも重要です。季節の変わり目も体調を崩しやすいので、注意してください。お風呂は熱過ぎない温度にして、長風呂は止めましょう。半身浴も効果的です。入浴後は湯冷めしないように、早めに靴下をはくなど、保温を心がけましょう。

トイレ

できるだけ洋式を選んでください。長時間いきむのは厳禁です。便秘しやすい場合は、医師に薬を処方してもらってしっかり解消させてください。

食事

塩分やカロリーを控え、栄養バランスが整った食事を3食、規則的にとるようにしてください。よく噛んでゆっくり食べて、腹8分目を心がけ、食後はしばらく安静を保ってください。ただし、食後すぐに横になるのは厳禁です。

睡眠

食後、3時間経過してから就寝し、睡眠時間をしっかりとってください。夜中、何度もトイレに起きる、なかなか寝付けない、途中で目が覚めてそれから眠れない、就寝中に息苦しくなる、早朝に胸痛が起こるなどは心不全や不安定型狭心症、睡眠時無呼吸症候群などの可能性があります。不安定型狭心症は心筋梗塞リスクが高い状態ですし、他の病気の場合にも深刻な発作につながる可能性がありますので、こうした症状があったら必ずご相談ください。

なお、旅行や出張などの予定がある場合も、必ず内容を事前に主治医に伝えて相談しましょう。緊急時の対処法などを事前に知っておくことで安心できます。

ご家族といっしょにいらしてください

ご家族といっしょにいらしてください脈の測り方、発作時の危険な兆候の発見、発作を起こした際の対処、服薬のチェックなど、ご家族や周囲の協力があれば安心です。診察の際にはぜひご家族もいっしょにいらしてください。また、ご家族だから気付かれる点について教えていただくことも適切な治療に有効です。

また心臓病のための食事制限は、そのまま健康な方が食べても生活習慣病予防になる内容ですし、患者様だけ少し変えることで対応できるメニューもたくさんあります。

なにより緊急時の対処法をご家族に知っていただくことは、とても重要です。緊急時にご本人は身動きもうまくできないこともありますが、周囲の方が脈のとり方などを覚えていればしっかり確認して緊急性を知ることができます。ご質問にも丁寧にお答えしていますので、お気軽にいらしてください。

脈のとり方

患者様の手首の内側、親指に近い部分に人差し指と中指を当てて、1分間測ってください。

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